生物多様性の保全と持続的な利用に関する総合的な指針として、四国内の各県で生物多様性戦略の策定が進んでいます。各地での生物多様性に関する取組みは、1993年に発効した生物多様性条約の規定に基づき進められています。条約の目的は、以下の3 テーマに分かれます。
@地域の生物多様性の保全
A生物多様性の構成要素の持続可能な利用
B遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分
@とAについては、各県戦略の内容でも触れられていますが、Bについては、学ぶ機会がなかなかありませんでした。1月23日開催の勉強会は、この名古屋議定書をテーマに高知県立牧野植物園で開催しました。
勉強会では、海外遺伝資源の利活用の現状や名古屋議定書に関する国際及び国内の現在の動向について、大学の研究者や企業、NPO、行政それぞれの立場から取組みの紹介や現況の報告がありました。その後、会場内の一般参加者を含めたパネルトークを行い日頃の疑問や将来研究や事業がどのように関係してくるかについて質疑が行われ、条約や議定書を自分事として考えてもらうためのきっかけとなりました。
具体的には、普段の生活で利用している化粧品や薬、食料の中には、国外で発見された有用な植物や微生物といった資源を研究して開発されたものが少なくありません。これまで私たちはさまざまな種類の資源を海外から輸入してきました。しかし、海外で得た資源が国境を越えて移動した際に、資源の利用者は、原産国と対等かつ衡平な関係をどう担保していけばいいのか定められていませんでした。この議定書はそのような問題に対処すべく策定された経緯があります。
今後も頻繁に海外機関と生物資源のやり取りを行っていく際に、議定書は、研究利用のみならず衣食住に用いられる動植物資源の取扱いなど、広範囲にわたる医薬品、食物、花卉など身近な開発商品に関係しています。日本は、まだ議定書に批准していませんが、海外では既に批准している国もあり、今後、海外と遺伝資源を使った共同研究や製品開発を円滑に進め、相互に利益を得ていくためには、議定書の動向を確認しつつ、遵守していくことが必要となります。
名前は聞いたことがあるけれど、内容については知られていない議定書についても、このような場を通じて広めていく必要性をあらためて感じました。


(参考)〜生物多様性条約・名古屋議定書とは〜
名古屋議定書は、2010 年に愛知県名古屋市で開催された第10 回生物多様性条約締約国会議(COP10)にて採択された生物多様性条約の議定書で、正式名称は「生物の多様性に関する条約の遺伝子資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書」です。本議定書は、自然の恵みや微生物などを含む生き物からつくられた製品から得られた利益を、原産国と利用国とで公平に分けるための手続きをはっきりさせることを目的につくられました。